差し押さえとは?
差し押さえとは、債権者の権利の実現のために、国が債務者に、債務者の不動産、債権等の財産を処分することを禁止する手続きです。
差し押さえは強制執行の前段階として行われます。
せっかく強制執行をしても、債務者が財産を処分してしまったあとでは効果はありません。
場合によっては債権者の権利の実現、多くは債権の回収が不可能になるのです。
これでは強制執行を行う意味がありません。
今でも債務者は債権者に財産を取られたくないために、財産を家族や第三者に移してしまうことがあります。
こうした債務者の行動を封じるために差押えが行われるのです。
不動産、動産、給料にも差し押さえが及ぶ
差し押さえの対象は不動産だけではありません。
動産、債権、給料などにも及びます。動産とは、不動産以外のモノを指します。
動産の差し押さえの対象は、車といった比較的高価なものから、盆栽のようなものまで多岐に渡るものです。
債権としては、保険金などが含まれます。
この債権の中でサラリーマンにとって一番厳しいのは給料債権が差し押さえられることです。
給与を差し押さえられると会社に知られてしまう
さらに給料の差し押さえは会社に通知が行きます。
給料を支払う会社に連絡をして差し押さえを行うのです。
これでは自分が差し押さえを受けるような状態にあることが会社にばれてしまいます。
これが原因で会社に居づらくなり、退職する人もいるくらいです。
ですが、追い打ちをかけるように退職する際に支給される退職金も対象になります。
こうした給料に対する差し押さえは、全額が差し押さえられるわけではなく、最低限生活していくための金額分は差し押さえが禁止です。
ですが、給料や退職金の差し押さえはサラリーマンには非常に影響のある手続きといえます。
銀行口座も差し押さえの対象になる
この他、銀行口座も差し押さえの対象です。
金銭的な価値のあるもので、生活に不可欠なもの以外は対象になると考えてもよいでしょう。
それほど差し押さえの手続きは強力なものです。
差し押さえは課税当局の切り札
不動産の登記簿謄本、現在の全部事項証明書を閲覧すると国税局や都道府県の県税事務所などによって差し押さえをされた履歴のある不動産を見ることがあります。
課税当局にとって差し押さえは納税の切り札です。
税金を滞納し、何度かの督促の後、差し押さえがなされます。
一例を紹介します。
あるとき東京の物件を大阪に住んでいる買主が購入することになりました。
ところが契約当日に都からの税金の差し押さえがあり、当日に契約をすることができなかったのです。
買主さんは新幹線に乗って東京へ向かっているところでした。
買主に連絡してその日の契約は延期です。
この例は売主さんに滞納額を払ってもらい、1ヵ月後に契約することができました。
このように契約当日に契約自体が延期になることもあるのです
後日差し押さえの連絡が所有者になされますが、このように所有者も知らないうちに差し押さえがなされることもあります。
差し押さえがなされると任意売却は不可能になることも
差し押さえがなされると任意売却は不可能になることもあります。
任意売却は民間での売買です。
このような取引や売買、所有権の移転は原則としてできません。
そのため、売却の前に返済して差し押さえを解除しておくか、あるいは売却代金によって債務を返済し、所有権の移転と同時に差し押さえを解除する必要があります。
差し押さえをした債権者に依頼して差し押さえを解除してもらうほかありません。
具体的には差し押さえをした債権者に対する債務を弁済することになります。
財産が差し押さえを受ける危機に直面した場合は専門家への相談をお勧めします。
【執筆者】
ライフソレイユ株式会社
加藤康介(宅地建物取引士)
大手コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして6年間従事し、中小企業の経営をサポート。
その後、任意売却専門の不動産会社「ライフソレイユ株式会社」を設立し、これまでに1000人以上の住宅ローン返済に困窮する相談者の生活再建を支援している。
その活動がテレビでも取り上げられ、雑誌にも定期的に記事を寄稿している。