期限の利益の喪失とは、簡単に言うと、
分割返済の権利を失い、残りのローンを一括で支払わなければならない状態を指します。
住宅ローンの滞納が続くと、数か月後には「期限の利益喪失」の通知が届き、金融機関から残りのローンを一括で請求されます。
支払えなければ、競売にかけられて自宅を失う可能性もあります。
そうならないためにも、少しでも早い段階で相談することが最善策です。
早めに正しい情報を得ることで、競売を避けられる可能性があります。
そもそも「期限の利益」とは?
期限の利益は、期日までに借金を分割して返済していくことができる債務者に与えられた権利です。
たとえば住宅ローンやカードローンは、借りたお金を一度に全部返すのではなく、決まったスケジュールに沿って少しずつ返していく仕組みになっています。
債務者にとっては返済までの期間(時間)を稼げるので、毎月の期日までに決まった額を用意できれば良いことになります。
※実際には、分割払いの権利を得る代わりに、金利(利息)を支払うことになります。
「期限の利益の喪失」とは?
=
分割での返済ができなくなる
=
一括で返済しなければならない状態
借金の返済が滞ると、分割して返済する権利(期限の利益)を失い、残りの債務を一括で支払う義務が発生します。
たとえば、ローンの残高が2,000万円ある場合、その全額を一括で返済しなければなりません。
これが「期限の利益の喪失」です。
なお、この状態に陥った場合でも、債権者によっては「滞納した全額分を支払います」などと交渉することで期限の利益の喪失を免れられるケースもあります。
しかし、基本的には掛け合っても応じてもらえないと思っておいた方が良いでしょう。それだけ期限の利益喪失は厳しい状況といえます。
ローンの滞納で「期限の利益」を失うことに
高額な住宅ローンを組んだ場合、分割払いで返済していくのが一般的です。
しかし、この返済を一定期間滞納すると、「期限の利益を喪失した」とみなされ、残りのローンを一括で返すよう求められることになります。
実際、住宅ローン契約書には「返済の遅延があった場合、残りのローンを一括で返済しなければならない」といった内容の条項が盛り込まれていることがあります。
そのため、ローンを滞納すると金融機関から一括返済の請求が来ます。請求金額には「遅延損害金」も含まれます。(※遅延損害金とは?)
■期限の利益を喪失するタイミング
書類上では「返済の遅延によって期限の利益を喪失する」と記載されていても、
実際の運用上では、住宅ローンを5~6か月滞納すると期限の利益を喪失するのが一般的
です。
そして、期限の利益を喪失すると債権者である金融機関から通知が届きます。
なお、一括返済が難しいため、その後の対応が必要になるケースがほとんどです。
■期限の利益喪失となる事由の例
- ・住宅ローンを長期間滞納した場合
- ・破産手続開始の決定を受けた場合
- ・契約条項に違反した場合
などが挙げられます。
期限の利益の喪失後に起こること
住宅ローンの滞納で「期限の利益」を失うと、まず銀行から残りのローンについて一括返済を求められます。
その請求に応じられなければ、次に「代位弁済」が行われ、その後に待っているのは競売です。
代位弁済とは、保証会社が債務者の代わりに銀行へローンを支払うことです。
その後、今度は保証会社(または委託された債権回収会社)から、「代わりに払った分を返してください」という請求が来るようになります。
※債権者は銀行→保証会社へ移ります。
なお、保証会社との契約がない場合は、債権者である銀行内での窓口の部門が変わります。
また、代位弁済後から競売にかけられるまでの時間の猶予も、ほとんどありません。
新たに債権者となった保証会社は、その債権を回収するために、一定期間が経過すると裁判所へ競売の申し立てをします。
そして競売で落札されると、強制的に自宅を追い出されてしまいます。
■住宅ローンの滞納による期限の利益喪失の流れ
1.住宅ローンの滞納
遅延損害金が発生する。住宅ローンを滞納すると、契約に基づき期限の利益を喪失する事由とされる(通常は5~6か月の滞納により事由が発生)。
2.一括請求の通知が届く
期限の利益を喪失後、金融機関から一括請求の通知が届く。分割払いの権利を失っているため、残りのローン(遅延損害金を含む)を一度に返済しなければならない。
3.支払えない場合の影響
通知を放置するなど一括請求に応じないままでいると、債権者が法的な手続きを進めることがあり、最終的には自宅の差押えや競売となる場合がある。競売になると、自宅は強制的に売却され、その売却金は借金の返済に充てられる。そして強制退去となる。
期限の利益喪失後でも競売を回避する方法(任意売却・リースバック)
期限の利益を喪失した後に競売を避ける方法は、基本的にローンの一括返済に応じるか、不動産を売却するしかありません。
ここでは、競売を回避する手段として「任意売却」と「リースバック」の2つを紹介します。
任意売却
競売を避けるための手段として一般的なのが任意売却です。
任意売却は、住宅ローンが残っていても一般の市場で不動産を売却できる方法で、競売よりも高く売れる可能性があり、プライバシーも守られやすいという特徴があります。
ただし、任意売却するためには債権者(銀行や保証会社)の承諾が必要です。
※詳細は【任意売却とは?~任意売却と競売の違い】をご覧ください。
◆任意売却で競売回避した事例はこちら
→競売の申立の直前に任意売却に切り替えたK様(愛知県岡崎市)
ご相談者さまの声
「何とかなるだろう」と思い放置していたら競売の話が出て、慌てて相談しました。
債権者からの期日を過ぎていたものの、ライフソレイユさんに依頼して無事に任意売却できました。
リースバック
リースバックとは、自宅を売却し、買主と賃貸借契約を結ぶことで住み慣れた家にそのまま住み続けられる不動産の売却方法です。
所有権は買主に移りますが、引っ越しせずに済み、売却したことは周囲に知られにくいというメリットがあります。将来的に買い戻しを検討してこの方法を選ぶ方もいます。
また、リースバックも任意売却と同様に債権者の承諾が必要です。
ただし、リースバックには、基本的に以下の条件が求められます。
・売却代金が住宅ローン残高を上回っていること(物件評価額>ローン残高)
・売却後の家賃を支払える収入があること
※詳細は【リースバック~自宅を売却後も済み続ける方法】をご覧ください。
◆リースバックで競売回避した事例はこちら
→リースバックでカード残債を返済し、自宅に住み続けたS様
ご相談者さまの声
競売にかけられる前に慌てて相談し、リースバックという方法を知りましたが、競売にならずに済み助かりました。
今後は自宅を買い戻せるよう努力していきたいです。
まとめ:期限の利益喪失後、一括請求の通知を受けたら放置はNG
月々の住宅ローンが払えず滞納を続けると、期限の利益を喪失します。
期限の利益を失うと、残っている住宅ローンを一括で返済するよう金融機関から請求されます。
これをそのまま放置すると、最終的に自宅は競売にかけられ、家を失うことになります。
一括請求されたらどうする?
一括請求の通知が来ている場合は、できるだけ早めにご相談ください。
放っておくと、対応の選択肢が限られてしまう可能性があります。
まだ請求が届いていなくても、今後の支払いが難しそうであれば、早めのご相談をおすすめします。
任意売却を活用することで、状況を立て直せる可能性もあります。
少しでも早いご相談が、より良い解決への近道です。
<関連ページ>
・任意売却の仕組み・期間と流れ
・こんな通知がきました(住宅ローン滞納に関する通知例)
(監修:代表取締役 平嶋潤一)
