<相談内容>
住宅ローンの返済が厳しくて任意売却を検討していますが、任意売却ができないケースはありますか?
<回答>
共有名義人の同意
大前提として、不動産の売却を行うには不動産の共有名義人の同意は絶対条件です。
共有名義人がいる場合、名義人全員が売却に賛成しなければなりません。
よくある任意売却ができないケースとして、離婚した前の夫や妻が不動産の持ち分を持っている状態で連絡が取れないというケースが挙げられます。
これは特に、共有名義人と疎遠になっている場合や、何らかの理由で同意が得られない場合に問題となりやすいです。
同意がなければ、売却手続きそのものが進められないため、任意売却はできません。
不動産の共有名義は、住宅ローンを組む際に収入合算をした場合や、婚姻期間中に共同で購入した不動産によく見られます。
名義人が複数いる場合、それぞれの持ち分が明確に決まっているため、売却するには名義人全員の合意が必要です。
仮に一人が反対してしまうと、売却手続きが進まなくなるため、共有名義人との事前の話し合いや関係性の維持が重要です。
また、共有名義ではなく連帯保証人がいる場合、連帯保証人の同意は必ずしも必要ではないことが多いです。
しかし、連帯保証人にも通知が行きますし、今後の信用情報に影響が出ます。
そのため、連帯保証人とも事前に話し合い、同意を得ておく方がスムーズに進行することが多いでしょう。
さらに、連帯保証人も残債の支払い義務を負うため、今後の返済計画についても十分に協議する必要があります。
共有名義に関連する問題は、単に売却の同意だけに限りません。
例えば、複数の名義人がいる場合、各名義人の持ち分の処理方法や、売却後の資金配分についても調整が必要になります。
特に、親子や兄弟姉妹での共有名義の場合、感情的な問題が絡みやすく、交渉が難航することがあるため、事前にしっかりと話し合うことが重要です。
共有名義の所有者同士の信頼関係や意見の一致が求められる場面も多いため、コミュニケーションを欠かさないようにすることが、売却をスムーズに進めるためのカギとなります。
競売の入札が開始している
任意売却を検討している場合、もう一つの重要なポイントは競売の進行状況です。
競売は、住宅ローンが返済不能になった場合に、債権者が裁判所に申し立てて強制的に不動産を売却する手続きです。
競売が進行している状態では、任意売却を進めるのが難しくなることがあります。
厳密には競売の「開札」までに引き渡しを済ませれば任意売却は成立させられますが、「入札」が開始している時点で、金融機関が任意売却を認めないケースが多いです。
これは、金融機関がすでに競売にかけることで回収を見込んでいるためです。
また、買主を探す期間からしても、入札が開始していると現実的には厳しいと言えます。
任意売却には、売却先を探す時間が必要です。
通常の不動産取引でも、売却先を見つけるには数ヶ月を要する場合が多く、競売の進行中ではその時間を確保することができないため、任意売却の成功率が低くなります。
競売は通常、金融機関が債務者に対して返済を求めたが応じられなかった場合に行われますが、その過程では事前に競売の通知が債務者に届きます。
競売にかけられると、市場価格よりも大幅に安く売却されることが多く、債務者にとっても不利な結果になることが多いため、できる限り競売を避けるための努力が必要です。
任意売却を検討する場合には、早期の対応が重要であり、特に競売が開始される前に売却の手続きを進めることが理想です。
競売が進むにつれて、金融機関との交渉が困難になるため、売却のタイミングを見極めることが成功のカギとなります。
税金の差し押さえが入っていて、市や税務署が解除を認めない
税金を滞納していて差し押さえをされている状態では、不動産を売却することができません。
差し押さえが入っている場合、税務署や市町村から不動産に対して権利が設定されており、この状態では売却が制限されます。
ただし、金額が数十万円程度の場合には、売却代金からの税金返済を認めてくれる債権者もいますので、差し押さえがされているからといって任意売却を諦める必要はありません。
また、市区町村によっては滞納している税金の分割払いが認められることもありますが、名古屋市や一宮市は交渉に一切応じません。
税務署や市町村との交渉は非常に重要で、タイムリーに対応することが求められます。
特に、任意売却を検討する際には、税務的な問題を早期に解決することで、売却手続きをスムーズに進めることが可能になります。
差し押さえが入っている場合でも、専門家を交えて話し合いを進めることで、解決策が見つかることがあります。
任意売却を検討する際には、不動産にかかる税金の未払いがあるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
なお、税務署や市町村との対話を早期に行い、必要な手続きを迅速に進めることで、売却を成功に導くための下地を整えることが大切です。
債権者が任意売却を認めない
任意売却はあくまでも債権者の合意があって行うことができるため、債権者が任意売却を認めない場合は、進めることができません。
中には、任意売却を完全に認めない金融機関や、非常に厳しい条件を突き付けてくる金融機関もあります。
金融機関ごとに方針が異なり、債権者の意向によって売却の成否が左右されることがあります。
債権者としては、通常の売却よりも競売を選んだ方が早く資金回収ができると判断した場合や、他の事情で任意売却を進めたくない場合に、このような対応を取ることがあります。
そのため、任意売却を進める際には、事前に債権者との話し合いや交渉が必要不可欠です。
特に、大手の金融機関では、内部での承認プロセスが複雑であったり、担当者の裁量が少ないため、思うように進まないケースもあります。
任意売却を認めてもらうためには、債権者に対して説得力のある提案を行うことが重要です。また、債権者との関係性を維持し、丁寧なコミュニケーションを取ることも大切です。
任意売却に向けて依頼主が協力的でない
他にも見落としがちな事として、任意売却を成功させる為に重要なのが、ご依頼者様が任意売却に対して協力的に対応して頂けるかどうかという事です。
例えば、購入を検討している方が、家の内覧や内見を希望した場合、家の中を見せて頂けないようであれば、売却先も決まりにくいので、売却に向けたご依頼者様の全面的な協力は、絶対に必要な事です。
実際には、内覧や内見について協力的でないご依頼者様もいらっしゃいますが、ご依頼者様にも、購入頂く方の気持ちになって協力頂く事が、任意売却を成功に導く重要なポイントになります。
任意売却は、勿論書面上の手続きも多数あり、それを間違いなく対応する事も大切ですが、重要な事は住宅ローンを組んだ際に携わった全ての人、家を購入して頂く人に対して、真摯的に対応していく事です。
そして、ご依頼者様にとって好条件で任意売却を進めていくためにも、自らで行うのではなく、経験豊富な任意売却の専門家の協力してもらう事をお薦めいたします。
また、ご依頼者様の早急に進めていきたい意向もございますので、専門家に依頼する方が、間違いなくスムーズに対応できると思います。
【執筆者】
ライフソレイユ株式会社
加藤康介(宅地建物取引士)
大手コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして6年間従事し、中小企業の経営をサポート。
その後、任意売却専門の不動産会社「ライフソレイユ株式会社」を設立し、これまでに1000人以上の住宅ローン返済に困窮する相談者の生活再建を支援している。
その活動がテレビでも取り上げられ、雑誌にも定期的に記事を寄稿している。