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任意売却の仕組み・期間と流れ

住宅ローンの返済ができずに滞納をしてしまうと、自宅が競売にかけられるのを待つしかないのでしょうか?

競売になってしまうと、自宅が相場よりも安く叩き売られてしまううえに、競売になったことが公表され近所や職場に知られてしまいます。

そのような最悪の自宅を回避する方法のひとつが任意売却です。

任意売却とは?

任意売却とは、主に①住宅ローンが払えなくなってしまった場合や、②物件の価格がローンの残高を下回って売却してもローンを全額返済できないできない場合などに、債権者(ローンを借りている金融機関や保証会社)の承諾を得たうえで売却する方法です。

ローンが残っていると一般の不動産売却ができない?

住宅ローンなどが残っている不動産を売却するには、残債を一括返済することが条件となります。
そのため、不動産を売却して一括返済ができれば一般の不動産売却でも問題なく手続きを行うことができます。

逆にもし売却額がローンの残高を下回ってしまうと、その差額を自己資金で持ち出さない限り、その不動産の売却自体を銀行が認めてくれません。

この「売却を認めない」というのは「自宅に設定されている抵当権を解除しない」という意味で、抵当権が解除されない不動産は原則として売却することができません。

任意売却の仕組み

ローンの返済が困難になって滞納してしまうと、最終的には自宅が競売にかけられてしまいますが、競売では相場よりも低い金額で売却されてしまうことがほとんどです。

これは債権者の立場からしても、デメリットです。
債権者としても少しでも高く担保物件を売却して、少しでも多く債権を回収したいと思っているからです。

そのため、「高く売りたい」という意味では、ローンの借り手である所有者と貸し手である債権者の利害は一致しているのです。

そこで、任意売却を扱う不動産会社を通じて、競売ではなく任意売却をしたい旨を債権者に申し出ることによって、多くの場合は承諾を得ることができるのです。

任意売却するためには一定期間の滞納が必要

ただし、任意売却をするためには、期限の利益を喪失している必要があります。
期限の利益の喪失とは、簡単に言うと滞納により住宅ローンの契約が解除となり、残っているローンの一括返済を求められる状態のことです。

契約にもよりますが、一般的には5~6ヶ月に渡ってローンを滞納してしまうとこの期限の利益が喪失されます。
つまり任意売却をするためには5~6ヶ月の滞納が必要になるです。

なぜ、ローンを滞納して期限の利益を喪失しないと任意売却できないのかというと、銀行の立場から言えば任意売却されるよりもそのまま最後までローンを返済してほしいからです。

また、期限の利益を喪失すると、多くの場合はあなたに代わって保証会社が銀行に一括返済(これを代位弁済と言います)するため、実際には銀行ではなく保証会社や保証会社が委託する債権回収会社と任意売却の調整を行う必要があります。

競売との違い(任意売却のメリット)

競売よりも高く売れる

競売の場合、通常の相場の7~8割程度の金額で安く叩き売られてしまい、多額の債務が残ってしまいます。

一方で、任意売却はあくまでも一般の市場で自宅を売却するため、通常の市場価格(相場)で売却することが可能です。

事情を近所や職場に知られない(プライバシーが守られる)

競売の場合、自宅が競売になったことがインターネットなどに公開されてしまい、近所や職場、お子様の学校などの人に知られてしまう可能性が高いと言えます。

また、自宅の住所や外観写真はもちろん、室内の写真も公開されます。
さらに、競売で入札を検討している不動産会社や投資家が自宅を見に来ることもあります。

任意売却は、あくまでも外からは一般の売却と変わりませんので、単純に引越しているようにしか見えず、詳しい事情を知られてしまうことがありません。

売却後に残ったローンの分割返済を相談できる

任意売却あるいは競売の売却代金で住宅ローンを返しきれなかった場合、当然ながらその残債の返済義務は残ります。

しかし、任意売却であれば、残ってしまった残債もその時の収入や家計の状況に応じて、返済条件を相談することが可能です。

債権者にもよりますが、一般的には月1~2万円ずつの返済が相場です。
※ただし債権者によっては強硬な取り立てをしてきます。また収入が多い方であれば月3~5万円を要求されるケースもあります。

一方で、競売で多額のローンが残った場合、残債の一括返済を求められてしまうケースもありますので、そうなると破産しか道が残されなくなってしまいます。

引越し代の交渉が可能

住宅ローンを滞納してしまっている状況ですと、任意売却して引っ越すにも引越し代がなく引っ越せないということも珍しくありません。

競売ではこの引越し代の交渉には全く応じてもらえませんが、任意売却であれば売却代金の中から引越し代を捻出してもらえるよう債権者に交渉することが可能です。

ただし、引越し代はその時の状況や債権者によって異なりますので、必ず捻出できるものではありません。

任意売却の期間と流れ

任意売却の期間は、通常3か月から6か月程度かかることが一般的です。

しかし、売却が成功するかどうかは買い手が見つかるかに依存するため、地域の不動産市場や物件の状態によって期間が延びることもあります。

任意売却は競売と比べて柔軟に交渉ができるため、より高い価格で売却できる可能性がある反面、迅速に進めるためには早期の行動が重要です。

また、金融機関との協議や債権者の同意も必要なため、手続きに時間がかかる場合があります。

①期限の利益喪失

任意売却をするためには、前述の通りまずはローンの返済を停止して期限の利益を喪失する必要があります。

まだ滞納期間が短く、期限の利益を喪失していない場合であっても、この段階から任意売却専門の不動産会社や弁護士に相談をしておきましょう。

②債権者(金融機関)任意売却の申出・書類提出

任意売却を依頼する不動産会社を通じて、債権者に任意売却の申出に関する書類を提出します。

なお、この時点でまだ競売が申し立てられていなければ、一定期間は競売の進行を待ってもらえます。

③価格査定・債権者への査定書提出

任意売却を担当する不動産会社に自宅の価格査定をしてもらい、不動産会社から債権者に査定書を提出してします。

ただし、販売価格の決定権は債権者にあるため、販売額については債権者の承諾を得る必要があります。

④販売価格の決定・販売活動開始

提出した査定書を基に、債権者が販売価格を決定して通知してきます。
価格が決まった段階で一般の市場で販売活動を開始します。

なお、いつ売れるかどうかは不透明なため、この段階で慌てて引越しをする必要はありません。
ただし、買い手が現れた時にすぐに引っ越せるように準備だけは進めておくようにしましょう。

⑤買主決定・売買契約

購入の申込が入れば、買主と売買契約を締結し、債権者へ報告します。
また、この時点で引越しの目途を付ける必要があります。

なお、債権者が複数いる場合(複数の金融機関から借りている場合や税金の差押がある場合など)は、担当の不動産会社が売却代金をどこにいくら返済するかという配分調整を行い、全債権者の同意を得る必要があります。

⑥代金決済・物件引き渡し・債権者への返済

買い手に売買代金を支払ってもらい、その代金で債権者に返済をします。
また、代金の支払いと同時に所有権を買い手に移転する登記を行います。(登記は司法書士が担当します)

⑦残債の返済条件の確定

任意売却が完了した段階で、残ってしまうローンの額が確定します。
この残債をどのように支払っていくかは、債権者と相談のうえ決定します。

なお、必要に応じて弁護士に債務整理を依頼することも可能です。

任意売却にかかる費用

任意売却にかかる費用は、不動産会社の仲介手数料(売買代金の3%+6万円)と抵当権の抹消費用(1~3万円)、印紙税(売却額により異なる)です。

ただし、これらの費用は印紙税を除いてすべて売却代金の中から捻出できますので、ご自身で持ち出して準備してする必要はありません。

そのため、実質的にはほぼ持ち出しなしで任意売却を進めることが可能です。
※一部に相談料やコンサルティング料などの名目で不当な報酬を請求してくる業者がいるようですのでご注意ください。


【執筆者】

ライフソレイユ株式会社
加藤康介(宅地建物取引士)

大手コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして6年間従事し、中小企業の経営をサポート。

その後、任意売却専門の不動産会社「ライフソレイユ株式会社」を設立し、これまでに1000人以上の住宅ローン返済に困窮する相談者の生活再建を支援している。

その活動がテレビでも取り上げられ、雑誌にも定期的に記事を寄稿している。

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