競売と比較した際の任意売却のメリットとして、しばしば挙げられるのが引越し代です。
だだし、任意売却であれば必ず引越し代が出るというわけではなく、状況や債権者によっても変わってきますので、その要件を押さえておきましょう。
住宅ローン返済のために任意売却を選択する際の課題として、次の住居への転居が挙げられます。
このとき、新たに賃貸物件を探す場合は、引越し代金はもちろん、新居契約のための敷金・礼金、仲介手数料なども考慮しなくてはなりません。
ただでさえ、住宅ローンが返済できないほど資金に余裕がない状態で、これらの費用を確保するのは大きな負担です。
しかし任意売却の場合、状況や交渉次第では債権者である金融機関が自宅の売却代金の中から引越し費用の捻出を認めてくれる場合も多く、うまくいけば次の生活をよりスムーズにスタートさせることができます。
競売では引越し代が出ない
任意売却のメリットのひとつは、引越し代を出してもらえる可能性があるということです。
競売の場合、主に転売を目的にした不動産業者が買い手となることが多く、そのような業者は収益を重視しますので、基本的に引越し代などの費用の捻出は認めてもらえません。
一方で、任意売却であれば、そのとき状況や債権者との交渉次第で、売却代金から引越し代を捻出することを認めてもらえる場合があります。
その相場はおおよそ10~20万円です。
ただし、住宅金融支援機構を中心に、最近では引越し代の捻出を認めないケースも増えてきているので、必ず引越し代がもらえるという前提では考えないほうがよいでしょう。
引越し代が出るケース
債権者にとって、売却代金から引越し代を出すのは義務ではなく、あくまでも善意によるものです。
当然ながら、引越し代を出してしまうとその分債権者が回収できる金額が減ってしまうため、本来1円でも多く貸した住宅ローンを回収したい債権者にとっては、引越し代は簡単に認められるものではありません。
ただし、任意売却に踏み切る方は住宅ローンの返済ができないほど困窮しているということも債権者は十分に理解しているので、どうしても資金が足りずに引っ越せないという場合には引越し代を認めてくれる場合があります。
ただし、このときも手元の資金がなく、どうしても引越し代を自力で捻出できないということを真摯に説明することが重要となります。
また、不動産をできる限り高く売却するように努力することも重要です。
債権者からすると、できる限り多く融資した住宅ローンを回収したいため、当初の想定よりも低い金額での売却となった場合は引越し代を売却代金から支払うことを渋ります。
逆に高い金額で売却できれば、その分引越し代を出す余裕もできるので、いくらで売却できるかということも重要なポイントとなります。
引越し代を出してもらうためのポイント
先ほどもお伝えしたとおり、債権者にとって引越し代を出すことは善意であって、義務ではありません。中には引越し代の捻出を全く受け付けない金融機関もあります。
そのことを前提に、引越し代を出してもらうためには以下のことがポイントとなります。
①引越し代を捻出できないことを誠心誠意伝える
債権者は、引越し代を捻出する余力があると判断すれば引越し代は出しません。
そのため、手元に資金がなく、努力しても捻出することが難しいということを、現状の貯蓄や生活状況を真摯に説明して、理解してもらうことが大切です。
②債権者との信頼関係を築く
引越し代を出すことは債権者の善意であるため、当然ながら債権者に信頼をしてもらうことが重要です。
そのためには、債権者とのやり取りをスピーディかつスムーズに行うことが必要ですが、これは債権者と交渉する任意売却業者の手腕によるところが大きいといえます。
また、過去にその任意売却業者が、対象となる債権者の任意売却を扱ったことがあるかどうかも重要なポイントです。
そのため、任意売却を依頼する業者の実績や経験、ノウハウによって、引越し代が出るかどうかが大きく左右されます。
③できる限り高い金額で不動産を売却する
先ほどもお伝えしましたが、債権者は回収金額が少なければ引越し代を出したがりません。
逆に高い金額で不動産を売却できれば、債権者からしても引越し代を出す余裕ができるわけですが、これも依頼する不動産会社の手腕によるところが大きいといえます。
引越し代が出ないケース
当然ながら、債権者はやむを得ない場合を除き、できる限り引越し代は出したくないというのが本音ですので、合理的な理由がない場合は認めてもらえないでしょう。
例えば、以下のようなケースでは債権者が引っ越し代の捻出を認めないことが多いです。
・引越しをするのに十分な貯蓄がある場合
・車や貴金属など、お金に換金できる資産を持っている場合
・金銭的に頼れる身内がいる場合
逆に言えば、これらのような状況ではなく、最大限努力しても引越し代を捻出できないということをしっかりと説明することが求められます。
これについても、債権者と交渉する任意売却業者の手腕によるところも大きいところです。
担当する不動産会社が任意売却に不慣れの場合、上記のようなケースに当てはまらず、合理的な理由があったとしても、それをしっかりと債権者に説明できずに引っ越し代が出ないということも珍しくありません。
引越し代に関する注意点
引越し代が出る・出ないの基準は債権者によって異なります。
また、同じ債権者でも状況によっても大きく異なるため、引越し代が出る前提では考えないほうが無難です。
そして何より、引越し代を認めてもらえる場合でも、それを受け取れるのは自宅を引き渡す決済の後になります。
そのため、事前に何かしらの方法で先に引越し代を支払えるように資金を確保しておかなくてはなりません。
従って、基本的には自力で引越しできるよう、できる限り貯蓄をしておくことが必要です。
こんな業者にはご注意ください。
よく、「必ず引越し代を捻出します」「引越し代は50万円程度出ます」といった誇大広告を目にしますが、近年ではそのようなことは絶対にありえません。
このような謳い文句を出している業者は悪徳業者か任意売却の知識のない業者ですので、十分ご注意ください。
なお任意売却では、引越し代に限らず様々な場面で債権者との交渉や調整が必要になります。
これをスムーズに行えるかどうかは、これまで培ってきた任意売却の実績とノウハウ次第です。
逆に、この調整や交渉が決裂し、債権者の信頼を失ってしまうと任意売却を認めてもらえず、競売に掛けられてしまいます。
当社は、愛知県を中心に東海地方でトップの実績を誇っており、住宅金融支援機構はもちろん、メガバンクから地銀まで数多くの金融機関で任意売却を扱ってまいりましたので、ご安心してご相談ください。
引越し代の交渉も含め、任意売却が成功し、ご依頼者様が新しい生活をスタートできるよう全力を尽くします。
【執筆者】
ライフソレイユ株式会社
加藤康介(宅地建物取引士)
大手コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして6年間従事し、中小企業の経営をサポート。
その後、任意売却専門の不動産会社「ライフソレイユ株式会社」を設立し、これまでに1000人以上の住宅ローン返済に困窮する相談者の生活再建を支援している。
その活動がテレビでも取り上げられ、雑誌にも定期的に記事を寄稿している。