住宅ローンの滞納が続いてしまうと、一定期間で「期限の利益喪失」という通知が送られてきます。
この期限の利益の喪失とは、「分割して返済する権利を失う」ということで、残っている住宅ローンの一括返済を求められてしまうため、ここまでくると事実上後戻りができなくなります。
ここでは期限の利益の喪失についてと、喪失してしまった場合の対処法を開設します。
また、期限の利益を喪失すると、その後に待っているのは「競売による自宅の強制売却」です。
そのような最悪の結果になる前に、一刻も早く御相談ください。
期限の利益とは?
期限の利益は「分割返済する権利」
住宅ローンやカードローンなどでお金を借りる場合、当然ながら一括ではなく分割して返済してくのが一般的です。
この分割して返済していく権利のことを「期限の利益」と言います。
住宅ローンを組む際に、銀行との契約書を真剣に読む方は少ないと思いますが、実際には住宅ローンの契約書この期限の利益に関する内容が明記されているはずです。
期限の利益を喪失とはどういうことか?
住宅ローンを一定期間滞納してしまうと、この期限の利益を喪失します。
期限の利益喪失とは前述の通り分割で返済する権利ですので、これを失うというこは残っているローンの一括返済を迫られるということです。
つまり住宅ローンが残り2000万円残っているのであれば、2000万円を一括で支払わなければなりません。
当然ながら、月々の返済でさえ厳しい方がこのような大金を一括で支払えることはまずないかと思います。
また、一度期限の利益を喪失してしまうと住宅ローンの契約自体が解除されてしまうため、銀行に滞納していた数か月分を一括で返済すると掛け合っても一括請求が取り下げられることはまずありません。
そのため、事実上この段階まで来てしまった時点でもう後戻りができなくなるということです。
期限の利益を喪失した後に起きること
期限の利益を喪失すると、残った住宅ローンを一括請求されます。
そして、これを支払えないと保証会社が銀行に代わりに支払い(これを代位弁済と言います)、銀行に代わって保証会社または保証会社が委託する債権回収会社から請求が来るようになります。
※なお保証会社との契約のない場合はこの代位弁済は行われず、銀行内の債権回収部門に窓口が変わります。
この代位弁済の次に待っているのが競売です。
保証会社が代位弁済をすると、その債権を回収するために自宅の競売を裁判所に申し立ててきます。
自宅が競売にかけられると、強制的に自宅が売却されて家から追い出されてしまいます。
この競売を止めるためには、一括返済をするか任意売却を申し出るかしかありません。
期限の利益を喪失してしまった場合の対処
任意売却
競売を避ける手段として最も一般的なのが任意売却です。
任意売却は、債権者(保証会社や銀行)の承諾を得たうえで、競売ではなく一般の市場で不動産を売却する方法です。
任意売却をすることで、競売のように安く叩き売られたり、競売情報が公開されてプライバシーを侵害される心配がありません。
「任意売却とは?~住宅ローンを残したまま自宅を売却する方法」>>
リースバック
リースバックとは、自宅を一度売却し、売却した自宅を買主(投資家など)から賃貸として借りてそのままその家に住み続けるという方法です。
一度自宅を売却するという点は任意売却と同じですが、任意売却した後に買主と賃貸契約を結んで賃料を支払うことで、引越しせずに済みます。
ただし、原則としてはリースバックをするためには売却代金で残っている住宅ローンを完済する必要があります。(例外として債権者の特別な同意を得た場合は除きます)
そのため、最低限の条件として「物件の評価額>住宅ローンの残高」である必要があるのです。
また、その際に買い手が求める賃料を支払っていくだけの収入があることも条件となります。
まとめ
期限の利益を喪失してしまうと、それまでのように住宅ローンを支払っていくことができず、一括請求をされてしまいます。
できる限り期限の利益喪失までに何らかの対処をしておくことはもちろんですが、万が一喪失しまったら競売を回避するために一刻も早く動くことが大切です。
【執筆者】
ライフソレイユ株式会社
加藤康介(宅地建物取引士)
大手コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして6年間従事し、中小企業の経営をサポート。
その後、任意売却専門の不動産会社「ライフソレイユ株式会社」を設立し、これまでに1000人以上の住宅ローン返済に困窮する相談者の生活再建を支援している。
その活動がテレビでも取り上げられ、雑誌にも定期的に記事を寄稿している。